Tsubono Report
■旧Global Risk Communications Newsletter
■最新の医学専門誌に報告された、
がん・栄養・環境リスクに関する疫学研究を紹介します。
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メディカル朝日2004年1月号 疫学者によるワールドレビュー 13 たばこのリスク 喫煙は、癌や循環器疾患をはじめとする多くの疾病のリスクを上昇させます。そのため、世界中で様々なたばこ対策の取り組みが行われています。けれども、こうしたたばこ対策の有効性を実証的に調べた研究は、それほど多くありません。また、意外なことに、癌の中でも胃癌のリスクが、喫煙によって上がるのか否かについては、まだ結論が得られていません。そこで今月は、これらの問題を取り上げた2件の論文を紹介します。 たばこ対策の評価 第一の論文は、米国における州レベルでのたばこ対策の有効性を評価した、無作為割付のない地域介入研究です(J Natl Cancer Inst 95:1681-1691、2003年11月19日号)。1991年、米国のNCI(National Cancer Institute)は、米国51州(コロンビア特別行政区を含む)全部を対象にたばこ対策の効果を調べる、ASSIST(American Stop Smoking Intervention Study)と呼ばれる研究プロジェクトを立ち上げました。 51州のうち17州を介入群、34州を対照群に割り付けました。介入群に対して、州ごとに年間平均140万ドルの資金助成を行い、たばこ対策の強化を推進させました。この研究一つのために、総額で1億1400万ドルの助成が行われました。州レベルでのたばこ対策として、次の4点が強化されました。?(職場や公共施設などの)無煙環境の拡大、?たばこ広告の規制、?たばこの販売制限、?たばこ税の増税によるたばこ商品の値上げ。つまりこの研究では、喫煙者個人に対する支援ではなく、州民全体を対象とする行政的・社会的施策を強化推進したわけです。 結果の評価として、介入前(1992?93年)と介入後(1998?99年)の時期で、18歳以上の成人の喫煙率を比べました。すると、対照群34州の喫煙率は、24.4%から22.3%へ、2.1%低下しました。一方、介入群17州の喫煙率は、25.2%から22.2%へ、3.0%低下しました。つまり、成人喫煙率は、対照群でも介入群でも低下していましたが、その低下の度合いは、対照群よりも介入群のほうが1%ほど大きいという結果でした。 1%の喫煙率の差というのは、あまり大きな差ではないのは確かです。けれども、この1%の差を喫煙者の人数に換算すると、全米で約28万人に相当します。つまり、対照群の34州でも介入群の17州と同等のたばこ対策が取られていれば、全米で28万人の喫煙者の減少が見込まれたことになります。 米国全土を介入群と対照群の2グループに分け、莫大な資金助成によって長期の介入を行い、その効果を評価する。そうした壮大な社会的実験が、(行政機関ではなく)NCIという研究機関の主導によって行われていることに興味を覚えました。 喫煙と胃癌リスク 続く第二の論文は、喫煙と胃癌リスクとの関連を調べた、ヨーロッパの前向きコホート研究です(Int J Cancer 107:629-634、2003年11月20日号)。1991年から98年にかけて、ヨーロッパ10カ国の25?70歳の男女47万229人を対象に、喫煙や食生活の状態を調べました。その後平均5年間の追跡調査を行ったところ、274人が新たに胃癌に罹患しました。 その結果、昔から吸わない非喫煙者の胃癌発生率と比べて、調査の時点で喫煙していた現在喫煙者の発生率は1.79倍高くなりました。1日の喫煙本数が多いほど、また、喫煙を始めてからの年数が長いほど、リスクが高まる傾向がありました。一方、調査の時点ですでにやめていた喫煙中断者の胃癌発生率は、非喫煙者の1.08倍で有意差はありませんでした。 喫煙と胃癌との関係については、これまでも相当数の研究が行われてきました。その多くでは、喫煙による胃癌リスクの上昇を示唆する結果でした。ただし、喫煙者は非喫煙者よりも(胃癌リスクを下げると考えられている)野菜や果物の摂取量が少ない傾向が一般にあります。これまでの研究の多くでは、喫煙者と非喫煙者の食生活などの違いが、十分に考慮されてきませんでした。今回の論文は、ヨーロッパの大規模な集団を対象に、こうした問題を考慮した解析を行った点が特徴です。胃癌が、「たばこ関連癌」の一つとして国際的に認知される日も、遠くないかもしれません。 |
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